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この記事は、HCIアドベントカレンダーの13日目の投稿として書いたものです。

自己紹介

University of Washington Paul G. Allen School of Computer Science & Engineering の博士課程に在籍しています。織井理咲と申します。

博士課程では、技術を活用して脆弱なコミュニティの健康問題を解決する研究に取り組んでいます。研究分野は HCI (human-computer interaction) と ICTD (information and communication technologies for development) です。資源不足、貧困、社会的な認知バイアス等の複雑な要因によって健康に深刻な影響を受けている人々に医療を届けるというビジョンを持ちながら研究に励んでいます。 特にタブー視されている課題(女性の更年期、避妊等)を経験する人々の課題を解決することに貢献したいと考えています。

資源不足や貧困などに苦しむ人々を支援するHCI研究

現在の技術活用は、富める社会に属する人々の生活を更に便利で豊かにする方向に向かいがちだと思っています。結果として、劣位な環境にある人々と富める社会に属する人々の間の Digital Divide と生活の質の差が広がっているのではないかと考えます。

今回の記事では、最近取り組んでいる研究プロジェクトをご紹介します。

マラウイ共和国:正確で安全な医療情報管理の実現

アフリカのマラウイ共和国のHIVクリニックで使用されている電子カルテのセキュリティ向上に関する研究プロジェクトに参加しています。

エイズは、治療が進化しているにもかかわらず、「死にいたる病(やまい)」「治療法がない」という誤ったイメージがいまだにあり、エイズ患者は差別的・排除的な扱いを受けることが多いという現実があります。それもあり、エイズ患者の個人情報の取り扱いには非常に大きな注意が求められます。

エイズ患者がクリニック外の場所で受診する際に使われる電子カルテを、正確かつ安全にすることを目指すプロジェクトに参加することにしました。

マラウイでの現状を調査するために、2022年の夏に現地を訪問し、クリニックの医療従事者、エイズ患者、データ管理者、ならびに政府関係者と面談し、電子カルテに対する懸念と今後の改善点を話し合いました。現地調査では、マラウイの患者のカルテの情報管理は緩く、患者の治療や情報の安全についての課題が続いていることがわかりました。

この課題に対して、マラウイのクリニック従事者と政府関係者と連携し、正確で安全な医療を促すガイドラインを導入することに取り組んでいます。

訪問先のHIVクリニック (Credits to Lighthouse Trust) 訪問先のHIVクリニック (Credits to Lighthouse Trust)

フィールドワークについて

このようなフィールドワーク研究をする機会はICTDの分野ではかなり頻繁にあります。現地を訪問することでやっと理解できることがたくさんあり、現地を観察する重要性を知りました。初フィールドワークかつ初アフリカだったので行く直前まではとても緊張していて、正直宿泊地に到着するまで落ち着きませんでした。

2週間滞在した宿泊地の犬と仲良くなりました(左の犬がJelly Bean,右の犬がJoe Biden) 2週間滞在した宿泊地の犬と仲良くなりました(左の犬がJelly Bean,右の犬がJoe Biden)

特に今回のフィールドワーク研究ではクリニック従事者と政府関係者と直接会って面談することが目的でしたが、面談以外の機会であった観察や体験がとても貴重だと感じました。特に現地の文化、人間関係、クリニックの環境などを目で見ること、体験することでやっと少し理解できたという感じでした。たったの2週間のフィールドワークでしたが、予想以上に得たものが多く、現地のコミュニティや組織と関係性を築く重要性を改めて感じました。特にICTDの研究は現地とのパートナーシップによってやっと成り立つものでもあるため、今後も頻繁にフィールドワーク研究を行い、現地との繋がりを強めたいと考えます。

現地の食事。とても美味しかったです! 現地の食事。とても美味しかったです!

マラウイの夕焼けが好きで、毎晩見るために同じエリアを散歩していました。 マラウイの夕焼けが好きで、毎晩見るために同じエリアを散歩していました。